ワールドジョイントクラブ » コラム時事随想 » 雑誌はもはや“付録の包み紙”に 利益追求で雑貨屋化する書店はどこへ – 安田理央
今年のベストセラー(2010年・オリコン調べ)のなかで、2位に『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』(幻冬舎)、7位に『スッキリ美顔ローラー』(宝島社)がランクインしている。ご存知のとおり、どちらもダイエット用のバンドや、美顔ローラーの実物が付録となっている「書籍」だ。
美顔ローラーを出した宝島社では書店やコンビニなどの出版流通を使って販売した『電子たばこ ヘルシー』が210万部を突破している。
そしてファッション雑誌でも宝島社は毎号ブランドグッズの付録がつく『sweet』が115万部という大ヒットを飛ばし、トップを独走。他誌も負けじと付録をつけて、書店の店頭では、付録のバッグを並べてディスプレイし、「このバッグがついているのはこの雑誌」と本末転倒な売り方をしている。
雑誌が売れないと言われている時代だ。付録をつければなんとかなるのではと、ファッション誌以外にも、付録攻勢は拡大し書店はもはや雑貨屋化しつつある。もはや、雑誌はグリコのオマケ状態で、ユーザーとしては付録が目当てになっている。
こうした付録に頼った雑誌作りの状況を先行して体験していたのが、アダルト雑誌業界だ。その始まりは2004年頃。付録にDVDをつける雑誌が増えてきたのだ。DVDと言えば普通は数千円するものだが、数百円の雑誌の付録としてついてくるというのは、ユーザーにとってはかなりの衝撃であり、当然のごとく温かく迎え入れられた。例え、その内容がAVのサンプル映像ばかりでも、だ。
実際、DVDの製造コストは安いということもあり、2年後にはDVDがついていない雑誌の方が珍しいほどの状況になっていた。300円台の雑誌にもDVDがついたり、2枚、3枚とつける雑誌も出てきた。
そうなると、もうDVDがついていることは売りにはならない。そこでDVDに加えて、新しい付録をつける雑誌が出てきた。
その代表的な存在が「ベストマガジンスペシャル」(KKベストセラーズ)だ。2006年には、なんと「AVアイドルの愛液」を付録につけた。これはAVアイドルnao.の愛液の成分を分析し、大量生産したというものだ。
そして同誌の付録路線を決定づけたのが、2007年からつけられたパンティである。女性用の下着を付録でもらって、そんなに嬉しいのかと思わないでもないが、これが大当たりした。それを付録につけた号は飛ぶように売れ、やがて同誌は毎号のように下着を付録につけるようになる。さらに、ランジェリーや制服を付録につけたこともあったが、やはり下着の人気にはかなわなかったという。もちろんこの人気を見逃す他誌ではなく、アダルト雑誌は競うようにまねをしたが、今年になって主戦場であるコンビニからクレームがつき、現在、同様の付録は自粛されている。
最近、アダルト雑誌の編集者に話を聞くと、誰もが口を揃えて「誌面じゃ勝負にならない」と言う。グラビアや企画など、どんなに誌面作りに力を入れても売上に反映されないというのだ。ユーザーの購入の判断基準となるのは、やはり付録。本誌はどんどん薄くなり、DVDの包み紙と化していく。
そのため、編集者は誌面を作るよりも付録のDVDの動画を編集している時間の方が長くなっているという。また動画の素材はメーカーから借りてくるものがほとんどのため、アダルト雑誌の編集部にいながら、撮影現場に行ったことがない=生のヌードを見たことがないという編集者も増えているという。彼らは当然、モデルやカメラマンなどのスタッフの手配や、スタジオの予約をするといった、撮影現場を組むスキルを持っていない。
もうしばらくすると、アダルト雑誌を一から作ることのできる編集者は、出版社から、いなくなってしまうかもしれないのだ。
そしてこれはアダルト出版社に限った話ではないだろう。付録に頼り切った雑誌作りを続けていけば、必然的に誌面は二の次になってしまう。気がつけば、雑誌とは、単に書店流通を使った雑貨販売の方法ということになるだろう。そのころには誌面を作るスキルを持った編集者はいなくなっているかもしれない。そしてもし、ユーザーが付録に飽きてしまったら……。