ワールドジョイントクラブ » 社会貢献団体紹介 » 子どもたちの明日を守るために一過性でなく継続した善意とふれあいを

子どもたちのために使ってください――。2010年12月、群馬県中央児童相談所にランドセルが寄付されたことを皮切りに、日本中へと波及したタイガーマスク運動。寄付者が漫画『タイガーマスク』の主人公「伊達直人」と名乗ったことから一躍話題となり、その善意は約1ヵ月のあいだに全国47都道府県で確認されるまでとなった。
厚生労働省の調べによると、全国の児童相談所に寄せられた虐待に関する相談件数は2009年度で4万4210件、10年前の約4倍にまで膨れ上がった。療育や保護が必要とされる0歳から18歳までの子どもたちは、3万人超。同年齢の総人口の約0.1%、つまり1000人にひとりが虐待などを受け、社会からの支援を必要としているのだ。

「子どもたちの遊び相手になることも、ひとつの支援」と宮本さん
その背景にはなにがあるのか。福岡市を中心に児童養護への支援活動を行う、子どもNPOセンター福岡事務局長の宮本智子さんは「第一に経済状況の悪化が影響しています。不況のなか、仕事探しのために都市部に出る。それでも子育てはしなければならない。周囲には相談できる人もいない。その状況に追い詰められた結果、子どもを虐待してしまう場合が多いようです」と言う。
もちろん、児童養護施設に入所している子どもたちが、すべて虐待を受けていたわけではない。経済的に子育てができなかったり、単身で子育てをしなければならない負担であったり、直接の原因はひとつではない。「親自身、虐待をやりたくてやっているのではありません。それは行き過ぎたしつけや愛情表現とも言えます。自分が虐待されていたケースも多々あり、虐待の連鎖が問題となっています」と宮本さん。
福岡市内を見てみると、市内には2ヵ所の乳児院と3ヵ所の児童養護施設があり、2010年10月末現在で、要支援者は431人(里親制度含む)。その数は増加の一途をたどり、10年前と比べ約100人も増えている。また2009年9月から翌年4月までには6件の虐待死が発生するなど、痛ましい事件も少なくない。
子どもNPOセンター福岡では、その状況に一石を投じるため、家庭的な環境で子どもたちを支援する里親制度への協力を呼びかけている。活動の成果は数字にも表れ、里親の支援を受ける児童生徒は5年前の2倍となる96人、要支援者全体(福岡市)の約22%を占めるまでにいたった。
その活動には大きな理由がある。児童養護施設は通常18歳までだ。高校を卒業すれば退所するしか道はない。そのあとは住む場所や働く場所を自分で見つけることになるが、不況もあり、そう簡単にはいかない。里親制度であれば大学進学など継続的な支援も望めるが、施設養護では退所後の追跡調査もない場合が多いという。
今回、タイガーマスク運動に端を発し、児童養護問題解決へと気運が高まったのはたしか。一方、一過性で終わってしまってはこの社会的問題の解決にはいたらないだろう。「昔から物品の寄付をはじめいろいろな活動は行われていますが、匿名での支援がクローズアップされたことで、自分にもできると思った人が多いのでは」と宮本さん。「匿名の支援も良いのですが、大切なのは自分を見守ってくれる大人たちがいる、と子どもたちに気づかせること。顔が見える交流が大切なのです」。子どもたちの笑顔を守るためには、善意の継続と、ふれあいが欠かせないのだ。