ワールドジョイントクラブ » 紳士・淑女の休息 » 例えば、フィアット500をガルウイングにするような楽しみ方-パパイヤ鈴木

趣味人が好むイタリアのコンパクトカー
ところが、これすら「趣味とは言い切れない」と……
パパイヤさんにとっての趣味、そして休息とは?
取材・文/高橋 満 撮影/尾形和美

旧車に乗っていたころはいつ動かなくなってもいいよう(?)かなり早く家を出ていた。その心配をしなくていいだけでも精神的にはかなり楽に。「ただ、昔のクルマに乗りたいという思いは捨てきれないですね」

真っ赤な本革シートが美しい車内。マニュアルであることだけはどうしても譲ることができなかったので苦労して探したそう

イタリアのチューニングメーカー“アバルト”の手が加えられたスペシャルモデル。サソリのエンブレムに憧れる人も多いはず
“オンリーワン”でなければ
高級車でも魅力を感じない
穏やかな五月晴れの昼下がり、待ち合わせ場所である都内の公園前に奥さまとともに現れたパパイヤさん。我々が撮影をしているあいだ、奥さまは愛犬と公園内をのんびり散歩……。
「いま住んでいる家は目の前に大きな公園があって、休日はたいてい家族で足を運んでいますよ。子どもたちが一輪車や自転車に乗りはじめてから、僕に見てほしいとねだるんです。だからのんびりというわけにはいかないですけれどね。公園以外だと洗車をしていることが多いかな。ただし僕は“洗車マニア”ではないから、チャチャッと仕上げています。子どもたちがいるときは手伝ってくれます。もっとも目当ては家庭用高圧洗浄機ですが(笑)。最初はホイールを洗っていても、気づけば全身ずぶ濡れで遊んでいます」
そんな家族との温かい話を聞かせてくれたパパイヤさんは無類のクルマ好き。現在の愛車は映画『ルパン三世カリオストロの城』でルパン三世が乗っていたクルマとして有名なフィアット500の復刻版。その中でも中古車が全国で数十台しか流通していない希少なチューニングモデルだ。
「最初はオリジナルを手に入れようと考えたのですが、ショップから通勤に使うのは無理と言われてしまって。それならせめてマニュアルというところだけは譲らずにいようと。人に愛車を尋ねられたときに『ルパンが乗っていたやつの現代版』と言えば一発でわかってもらえるから楽ですよ」
オリジナルの500は1957年から77年まで製造されたモデル。パパイヤさんは旧車好きとしても知られている。今回も購入時に候補に挙げたのはトヨタMR2やホンダCR-Xなど80年代に一世を風靡したモデルだった。
「国産車は70年代以前のものよりも、旧車と呼ぶにはちょっと早いかもしれない“枯れ切る直前のモデル”が好きなんですよね。500に乗る前はシティターボⅡに乗っていました。そのころは並行してポルシェ911にも乗っていたのですが、なんか違うなと感じてすぐに手放しました。贅沢な話ですが、ポルシェからは“僕だけのオンリーワン”という感覚を得られなかったんですよ」
母親から受け継いだ
クルマ好きのDNA
パパイヤさんが旧いクルマに惹かれる理由は心地よいアナログ感とエンジニアの個性がむき出しになったギミックにあるそう。走行性能や快適性では現代のクルマに及ばないが、全身で味わうことができる“クルマを操る”感覚。隠しライトや、車速が上がるとせり出してくるスポイラーなど“ほかとは違うことをやる!”という意気込みが表れた機能。
「おそらく子どものころにコン・バトラーVやライディーンなどのロボットアニメに夢中になっていた感覚と近いのでしょうね。『コンバイン!』って(笑)。クルマ以外でも昔のビデオデッキやジュークボックスなどアナログ感に満ちあふれた機械には痺れてしまいます。この500は現代のクルマですが、長く付き合えそうな予感がしていますよ。数年後にはいい味が出てくるんじゃないかなってね」
幼少のころからクルマが好きでたまらなかったパパイヤさん。近所に住むおじさんにシフト操作の仕組みを教えてもらい、親とクルマで出かけたときはいつまでも乗っていたいと思っていた。そして家に近づくといつも寂しくなっていたそう。とくに母親からはクルマに関する影響を多分に受けているという。
「うちは父親よりも母親のほうがクルマ好きでした。僕は母親が運転する姿を見て育ちましたからね。大人になって母に『トラックの運転手をやりたい』と告げたとき、『あんたはやっぱり私の子だね』と言われたのを覚えています。母は若いころ、整備工になるという夢をずっと持ち続けていたと言うんですよ」
キャンピングカーを手に入れ
好きな場所で暮らすのが目標
そんなクルマの思い出話で盛り上がっていたとき、パパイヤさんが「クルマは純然たる趣味じゃない」とつぶやいた。運転は大好きだがそこには“移動”という目的が絡んでくる。オリジナルの500を選ばなかったのも突然動かなくなると仕事に支障が出るから。振り返ると、若いころから趣味らしい趣味がなかった。興味を示すのは将来お金につながると感じたものだけ。するとお金を稼ぐ前から仕事をしている気分になってしまう。そのことで悩んだ時期もあるという。
「どうも昔から仕事はお金を稼ぐもの、趣味はお金を使うものというイメージがあって。じゃあ僕がもっともお金を使っているのは何かと考えたら、家族だったんですよ。ということは僕の趣味は家族と過ごすこと。そう思えたらすごく楽になりましたね。趣味を持つのは素晴らしいことだと思うのですが、自分には少し贅沢かなと感じています。それよりもいまは生活の中にあるコントラストを感じながら家族とメリハリのある時間を過ごしているほうが性に合っているかなって」
もちろんパパイヤさんは自ら可能性を狭め、内にこもっているわけではない。むしろ何か面白いことはないか、もっと面白いことはできないかと常々目を凝らしている。パパイヤさんの言葉を借りるなら「日々あがいている」そうだ。例えばクルマ。これから少しずつ自分なりの個性を出せるよう手を加えていくつもりだという。究極の目標はこのクルマをランボルギーニカウンタックなどが採用していたガルウイングにすること。
「例えばものすごくお金に余裕があったとしても、2,000万円のクルマをポンと買うのは僕の性に合わない。だったら200万円のクルマに1,800万円かけて、世界でたった1台しかないクルマを作りたいですね。夢はいまの家を引き払い、コースター(トヨタ製マイクロバス)をベースにキャンピングカーを作って日本中を走りまわることです。いちおう“住所不定”にならないよう、小さなアパートは借りておきますけれどね。果たして家族の理解が得られるかわかりませんが(笑)」
キャンピングカーといえば、多くの男のロマンが詰まった究極の娯楽。さらに将来、本格的な電気自動車の時代が訪れたら、クルマを卒業して趣味性の強い自転車で移動することになる気がしているそう。もっともパパイヤさんはそれらも「生活なので趣味じゃない」と言いそうだが……。


パパイヤ鈴木
ダンサー・振付師
1966年6月29日生まれ。高校時代はバンドで米軍キャンプをまわり、17歳のときに『ダンシングゼネレーション』でデビュー。98年にパパイヤ鈴木とおやじダンサーズを結成。イベントやテレビ出演、CMの振り付けなど多方面で活躍中。
パパイヤ鈴木 オフィシャルブログ「かけひきバンバン」