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取材・文:藤井たかの
写真提供:NASA

もし、この地球を飛び出して宇宙に行くことができたら……あなたならどんなことをしてみたいですか? 家族や恋人と地球を眺めて思いを馳せるのもいいし、無重力空間を存分に楽しむのもいいでしょう。チャーハン作りにチャレンジするのもアリです。自分としてはやっぱりスペース合コン! 勢いよくカンパイすれば反作用で全員が後ろにのけぞり、酔った女子をあらゆる角度から介抱する。セッティングも壮大に、「集合場所は月!」。オホン……マジメな話、多くの宇宙飛行士が「宇宙から丸い地球を眺めれば、人類同士の争いがバカバカしく思えてくる」と語っています。なかには、宇宙で瞬間的に真理を悟ったり、神の存在を感じたり、後に超能力の研究に没頭した人もいます。それほどまでに宇宙に行くということは、人生観を変える大きな体験なのでしょう。さらにスケールを広げれば、数億年前に地球上で生物が海から陸に上がった時に進化したように、人類が地球を離れて宇宙に進出した暁には、覚醒する可能性だってあるわけです。……いわゆるガンダムのニュータイプ論ですが、あながち夢物語ではないかもしれません。
思えば、1961年、ユーリイ・ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行に成功した後も、人類は宇宙を目指し続け、すでに世界中で500人を超える人が宇宙という未開の地を体験しました。そして、今や訓練をした宇宙飛行士でなくても、宇宙に行ける時代になったのです。世界中で7人の一般人が自費で1週間の宇宙旅行を体験済み。その価格なんと当時約22億円! 「絶対、ムリッ!」と、言う前に話を聞いてください。半世紀前の日本では海外旅行も高額で富裕層しか行けませんでした。同様に将来的に宇宙旅行のインフラが整い、価格が下がれば、庶民の僕でも生きているうちに宇宙に行ける日が来るはずです!
では、リアルな話、宇宙開発はどこまで進んでいるのでしょうか? ここではその可能性を検証していきます!
サッカースタジアムと同じくらいの面積をもつ巨大建造物が、僕らの暮らす地球上空約350㎞を移動し続けていることをご存じでしたか? それが、1982年から計画・設計が始まり、1998年から建設がスタートした国際宇宙ステーション(以下ISS)です。今年の4月に山崎直子宇宙飛行士が滞在したのも、若田光一宇宙飛行士が「魔法のじゅうたん」を披露したのもこのISSなのです。
地球上空約350㎞を移動するISS。日の出前と日没後が肉眼で確認するチャンス!
写真提供:NASA
このISSの目的は「宇宙環境を最大限に利用して、さまざまな分野の実験や研究を行う」こと。なにも宇宙飛行士は縄跳びをしたり、琴を弾くためにISSに行っているんじゃないんです。例えば、微少重力の環境を利用した生物実験や材料実験、地上では結晶を得ることが難しいタンパク質の結晶生成実験などが行われています。また、宇宙での生活に関わるのが、宇宙空間や宇宙飛行下での条件によって、人体にどんな影響を及ぼすかを研究・解明する「ライフサイエンス(生命科学)」です。
僕らが宇宙に行くためには、単にロケットが進化するだけではダメ。宇宙には宇宙放射線が飛び交っているし、無重力状態では筋肉や骨密度が減少し、地上での10年分に近い老化現象が数ヵ月で起こるといわれています。無重力状態で体液が上昇するためにおこる「宇宙酔い」のメカニズムも、まだ解明されていません。人類が安全かつ快適に宇宙に行くには、過酷すぎる宇宙環境を克服することが必須なのです。当然、ISSが完成した暁には宇宙環境を利用した実験は今よりもドライブがかかるはず!
もちろん、完成後も日本人宇宙飛行士は活躍します。2011年に古川聡宇宙飛行士、2012年に星出彰彦宇宙飛行士がISSの長期滞在を予定しています。
今後の人類の宇宙進出の鍵を握るISSですが、じつは条件さえそろえば地上から肉眼で確認することができます。この秋はISS完成を祈りつつ、空を眺めて思いを馳せるのはいかがでしょう?
宇宙ビジネスコンサルタントが語る
これからの宇宙開発の行方
官から民へ?
ヴァージン・ギャラクティック社」をはじめ、ベンチャー企業による宇宙旅行や宇宙輸送機の開発が着々と進んでいる
cirgin Galactic
今後も増え続けるであろう民間企業の宇宙開発への参入で、宇宙に行く日が早まるかも?
cirgin Galactic

大貫 美鈴(著)
来週、宇宙に行ってきます
価格:1,575円(税込)
出版社:春日出版
Space Travel

サブオービタル旅行が成功して、じゃんじゃん宇宙飛行機を飛ばして稼働率が上がれば、価格は数年以内に300万~500万円まで下がると言われています。近い将来、「クルマを買うか宇宙に行くか」を迷う時代が来るかもしれませんよ。
Space Elevator
なにもバカ高いお金を払ってロケットに乗らなくても、もっと安くて気軽に宇宙に行く方法があります。それが天から垂れた糸で宇宙に行く「宇宙エレベーター」です。この宇宙エレベーターさえ完成すれば、ロケットを飛ばすことなく宇宙に行くことができて、製造・打ち上げコストもスペースシャトルの100分の1になる。しかも、特別な訓練をしなくても宇宙に行けるんです!
宇宙エレベーター基本原理概念図の一例
chigeo Saito(JSEA)
では、宇宙エレベーターの構造を簡単に説明しましょう。まず、全長5万~10万㎞のケーブルを用意します。次に、地球の自転と平行して24時間周期で1周する高度約3万6000㎞の「静止軌道」にステーションをスタンバイ。ステーションから地球に向けて下にケーブルを延ばし、反対に上にもケーブルを延ばして先におもりをつけ、高度約10万㎞まで到達すれば、引力と重力のバランスが保てます。あとは、台風などの被害が少ない地球の赤道上に出発ステーション(海上ポート)を作り、そこからエレベーターを昇らせます。高度約400㎞あたりに途中休憩用の低軌道ステーションを作るのもアリ。これで開発にかかる費用は約1兆円、じつはつくばエクスプレスを作るのとほぼ同額なんですよ。
宇宙エレベーター基本的な構造説明図の一例
chigeo Saito(JSEA)

宇宙エレベーター予想図
NASA Marshall Space Flight Center (NASA-MSFC)
確実に研究は進んでいるんですね! ほかに実現への懸念材料はありますか?
「振動の問題や、ほかの人工衛星やスペースデブリ(宇宙ゴミ)との衝突、テロの懸念、法律の整備などさまざまな課題が残されています。運用も一国や一団体ではなく、国連のような組織が運営することが望ましいと思います」
いつだって現実はキビシイ……。2030年に実現予定と言われていますが、本当ですか?「技術的な研究・開発だけなら30年ぐらいで実現すると言われていますが、同時に先ほどの課題をすべてクリアしないといけないので、今はなんとも……」
まぁ、生きているうちに乗れればいいかしら。しかも、実現すれば世界一周旅行と同額程度で宇宙に行けるらしい。よしっ! 今からコツコツ貯金しておきますか!

写真提供:NASA